それまで訪ねた工務店とは明らかに異なる、現実的なアイデアやノウハウがあると感じ、自邸のプロデュースを任せることにしました

雑誌 ガレージのある家 vol.34 掲載 photo / Kazushi HIRANO(平野和司)text / Shunsuke OOBUCHI(大渕俊輔)

荒削りなイメージの生活空間で眺望を楽しみながらくつろぎ、ガレージではクラシックカーを心ゆくまで、気兼ねなくいじれる青葉台のガレージハウス2・西宮

所在地/兵庫県西宮市
敷地面積/320.5m2(約97.0坪)
延床面積/114.3m2(約34.6坪)
ガレージ/40.6m2(約12.3坪) ビルトイン台数/2台
愛車/1974年式 MGミジェット、1970年式 MG 1300
他の特徴/崖地、中庭のある家、眺望を楽しむ家


イメージしたのは「工場や倉庫に住むような家」だった。抜群の景観を堪能すべく、傾斜地へのガレージハウス建築を決意したKさん。それを実現したのは、施主の趣味性を見事にかたちとした建築家と、ザウスによる、全方位からの的確なサポートだった。

グレーがかったモスグリーンの外壁、色調の異なるタイルが張られたエントランス、ビルトインガレージに収まるのは2台のヴィンテージカー。竣工から1年ほどしか経過していないにも関わらず、K邸からは、長くこの地で歴史を刻んできたような風格が感じられる。

Kさんは若かりし頃からクルマを愛し、ミニ、ビートル、パンダといった、シンプルで味のあるクルマを選んで所有してきた。やがて現在の愛車でもあるMGミジェットを手に入れ、奥深いヴィンテージカーライフの世界に足を踏み入れるようになったのだという。

だが、カバーをかけてはいたものの、青空駐車場での保管が常であったKさん。雨や日差しからクルマを守りたい想いと、一方で消費税アップの時期とも重なっていたことから、念願のガレージハウスを実現すべく動き出した。

「クルマの構造がシンプルなのがいいですね」。そう語るKさんの愛車は、共に1970年代製だがタイプの異なるイギリス車。日常のメンテナンスを自身で行いながら、ツーリングに出かけるのが楽しみだそうだ。奥の壁面にはラックが造作された。

土地と共に、家づくりのパートナーも同時に探していたKさんの目に留まったのは、個性豊かなガレージハウスを多数プロデュースしてきた『ザウス』。

それまで訪ねた工務店とは明らかに異なる、現実的なアイデアやノウハウがあると感じたことから、自邸のプロデュースを任せることにしたのだという。

Kさんが出した要望は、「2台収容のガレージ」、「質素で味のある」「天井の高いリビング」の3点。「工場の2階に住んでいるような」というイメージを伝えられた建築家、田中いちろうさんは、空間はできるだけシンプルなものとし、その分各部の素材にこだわり、生活していく中でその質感を楽しめるようにとのプランを提案したという。

では、実際に見ていこう。Kさんの要望どおり、1階には2台分のビルトインガレージが設けられている。当初はエントラスおよび書斎からクルマが見えるプランも提案されたようだが、結果的にはそれぞれの独立性を追求し、ふたつの空間をピロティでつなぐことにより、建物としての一体感を演出している。

K邸のアイコンともなっているタイル張りのエントランス。当初はレンガを積むプランもあったようだが、田中さんが古材のタイルを探し出して採用された。実際に使われていたからこそのヤレ感や不揃いな色調も、表情を作るには欠かせない要素だった。
玄関を入ると、極めて装飾の少ないシックな空間でアイアンの螺旋階段が出迎えてくれる。鉄骨の梁、外壁と同材の壁、モルタル左官塗りの床など、ここにも男性が好みそうな素材やデザインがふんだんに用いられている。
ピロティを通して見る夜景は、まるで絵画のような雰囲気。普段は通勤用のクルマをここに置いているとのことだが、しばし眺めていれば一日の疲れを癒してくれそうだ。

一方、2階に上がると、訪れた者は3.5mという高い天井のリビングに圧倒されることだろう。杉の足場板を敷き詰め、天井には木片をセメントで固めて成形した「木毛セメント板」、壁面は塗装仕上げの室内は、「ほぼ壁一面のガラス」と言っていいほどの大きな窓から入る陽光により、明るく優しい雰囲気に包まれている。それと同時に、隣家が一段下がっていることもあって、抜群の景観も堪能できる、何とも贅沢な空間だ。

「この窓から見える景色が一番のお気に入りなんです。日本らしい四季を感じられる家だと思います」、そう語るKさん。自然を味わい、趣味も満喫できるこのガレージハウスでは、まさにヴィンテージを味わうにふさわしい、豊かな時間が流れていくに違いない。

抜群の展望を楽しめることからこの地を選んだKさん。その景色を存分に味わえるよう、3.5mの天井部いっぱいにまで窓をとったリビングが設定された。存在感ある窓枠や本物の素材にこだわった仕上げなど、ここでもKさんの要望が 忠実に反映されている。
ベンチとして使っても楽しそうなコンクリート製のテレビ台や、鉄骨の柱から伸びたラックなど、主張しすぎない造作がお部屋をすっきりと見せる。床は杉の足場板を敷き詰めている。
プラモデル製作も趣味のひとつというKさんのために、玄関横には書斎兼ホビールームも設けられている。1/1からミニチュアサイズまで、K邸は一日中クルマに接していられるようイメージされているわけだ。
陽が沈むころ、K邸はまた違った表情を見せる。四季折々の変化を楽しむべく、照明の数も最小限。自然な明りの下で見るリビングは、質感やデザインへのこだわりをより一層感じさせてくれるのだ。
サニタリールームもモダンなボウルや鏡を取り入れながら、壁面や天井は共通の仕上げとし、家としての統一感が図られている。金属製のスイッチプレートなど、小技も雰囲気を高めるアイテムとして欠かせない。
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