家は「住む」というただの器ではなく、人と共に「暮らす」空間なのです。

榎本 康三(エノモト コウゾウ)

1955年京都府生まれ。80年同志社大学経済学部卒業、84年ムーデザイン事務所設立、86年大阪モード学院インテリア科講師、87年 1級建築士事務所アルシプラン株式会社設立(拠点を東京に移し、会社組織とする)、81年ヘンリー・ムーア大賞展佳作賞受賞(曲面における位相空間)、82年第14回日本国際美術展(位相曲面 8:1 Phase : Curred Surface 8:1)、神奈川県立近代美術館賞受賞、第15回日本国際美術展入賞(位相G曲面)、92年磐田市M建築設計 都市景観賞受賞、97年現代日本美術展入賞(位相曲面No.12 はがれた空間)、大宮商工会議所優秀賞受賞(大宮市・梅林堂宮原店)。趣味は本当の趣味は「車」。(今は楽しむ時間はありませんが・・・。)取り敢えず今の趣味お酒で、人類皆楽しく幸せになれたら最高だろうと常に思っています。

「家」は人がただ住むためだけの空間ではなく、そこに住む家族がどのような人生を送っていくか、ライフスタイル(人生)に大変大きな役割を担うものだと考えます。家は「住む」というただの器ではなく、人と共に「暮らす」空間なのです。その「家づくり」を、もちろん構造や耐震性などを考慮することは当たり前ですが、それ以上に施主の方と対峙しながら、その暮らし方を創造し、形にしていくことこそ一番重要だと考えます。

デザインに関しては、日本らしい美しい建築を創りたいと思っています。伝統的なもの、歴史的なものに習い、いかに新鮮に現代の生活スタイルに取り込み、融合させられるかを考えています。

ザウスで設計を手がけた施工例

設計例

「ある画家のアトリエ」
南に正対した2階建てのアトリエとギャラリーでもある玄関、「くの字」に折れ曲がる畳の間の配置。

一人の画家が、キャンバスの向こうに、そして自分に向き合い、一つの絵画を生み出し、鑑賞する場所。
そこは、静けさや、緊張感を纏った場所。
そこに、劇的な何かは必要ない。ここでしか生み出されない、特別な光や気配が存在する。このアトリエは、そんな場所であるべきだと思った。

和泉山脈を源として大阪湾へと流れる河川を見下ろす場所にある。
画家のアトリエ併用住居である。
元々この地にあった木立の中に建ったかのような、そんな佇まいになればいい。

木立の中、緩やかに登りながら蛇行する小径を、陽の光を浴び成長する緑に目を奪われては、立ち止まり、また進んで行くと、深い軒の先、格子戸越しに、画家の作品が飾られた壁が見えてくる。そこは、柔らかい色調の大谷石が敷き詰められ、地窓の先には竪格子の塀で囲われた庭へと視線が抜ける。

畳の間。そこで人は、腰を下ろす。先ほど歩きながら目にした緑を、ここでは、開口を抑えた室内から目にする。高木は幹のみしか見えない。芽吹く新芽、色付く葉、揺れる枝葉、見えない先を想像する。川の音に気付く。雨風で掻き消される程の音だが、雨の降った翌日の朝、そのことに気付かされる。

上流からの湿った風と朝の清々しい光を取り入れる開口、軒と格子が直射光を遮る東西のハイサイドライト、障子を立てこんだ南の吐き出し窓、それぞれの開口が、性質の異なる柔らかい光を制作の場に注ぐ。ここは、常に変わらない環境を与える場所ではない。壁で隔てた外の様子を感じ、筆を置く、そしてまた塗り重ねる。

確かに変化する日常の中に何かを捉え、表現する画家は、その変わるけれども変わらない、雲の動き、水音、緑の濃淡、一日の陽の移ろいを感じながら、またキャンバスに向き合う。

「H邸」
正面ファサード

「H邸」
リビングダイニング

「H邸」
2階玄関への外部階段

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