「住む人の想い」を一番大事にしていきたい

金子 智子(カネコ サトコ)

静岡県生まれ。93年武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業、95年東京芸術大学美術研究科建築科修士課程修了、(株)近代建築研究所入社、97年一級建築士取得、(株)早川邦彦建築研究室入社、04年金子智子建築設計室一級建築士事務所開設、11年〜武蔵野美術大学造形学部建築学科非常勤講師、東京都木造住宅耐震診断技術者取得。趣味は犬と散歩しながら近所を散策すること、観葉植物の手入れ、体メンテナンス程度のジョギング、壁の塗装!

住宅は、プロトタイプ化されているようで、実はバリエーションに富んだ空間の可能性を秘めている建築ではないかと思っています。その多様な選択肢の中で、周辺環境、敷地形状、予算などで決まってくる部分も多いですが、「住む人の想い」を一番大事にしていきたいと思っています。それは言葉で簡潔に表現できるものではないので、出来るだけクライアントさんとの対話を重ねて、無意識に考えていらっしゃることも組み込んで、丁寧に形にしていけたら良い住宅ができるのでは…と考えています。家をつくることは、自分、家族がこれからのどのような生活を送っていきたいのか、また家族お互いの関係、子供が居れば子育てなど、先のビジョンに想いを巡らすことから始まる気がします。そこで、自分に向き会い、家族と向き合うことで、それからの生活が、とてもスムーズに楽しく、素敵なものになっていくのではないかと思います。是非、あせらず時間をかけて、家づくりを楽しんでください。
影響を受けた建築家や建築
カルロ・スカルパ、ピーター・ズントー、早川邦彦
デザインについて
機能を重視しながらも、場に浸透する居心地の良い空間、様々な要素を取り込み、足しながらも引きつつ、シンプルでストレートな空間デザインを目指しています。

ザウスで設計を手がけた施工例

設計例

「版築の家」1
北側、道路からのファサード。道路反対側は畑や森が広がっています。

東京でありながら自然が残る住宅地の際に位置する、夫婦と子供一人のための住宅です。東西南は住宅に囲まれているものの、北側には四季折々の花が咲く畑、森が広がっているので、北側は森に同化するガルバリウム鋼板の外壁を黒系統で仕上げ、南側は人工的なハードコート、吹付の壁等、明るい空間になるように白系統の仕上げでまとめています。
道路との高低差が1.2mあったので、駐車場を2台分確保するため、かなりの切土を行わなければならず、この土を利用してこの場所になじむ空間をつくれないかと試行錯誤し、「版築」という土壁に行きつきました。型枠をつくって、土と主に石灰を突き固めて型枠を外すと、地層の断面のような様相の壁になり、この「版築」を、屋内外各所に配置することにより、北側と南側の対照的な面をつなぎ、内部と外部の空間をつなぎ、どこにいてもこの場所のポテンシャルを感じられるようにしました。
構成としては、東側隣地の庭に合わせて東南に開いたL字型にヴォリュームをつくり、エントランスからLDK、子供室まで、レベル差を利用したスキップフロアで分けられてはいるが、空間的にはつながっており、常に家族の気配は感じられるようになっています。そして、北側の森、南側のコートや樹木、各所に配置された版築を、多様な角度で見られるように、開口部や室内の延長上にテラスを設け、広がりを体感できる空間を目指しました。
(写真2、6…新建築社、写真1、3、4、5、7、8…上田宏建築写真事務所 撮影)

「版築の家」2
南側から中庭を。右側の版築の壁が北側まで続き、奥行き感を与えています

「版築の家」3
リビングよりテラス越しに中庭を。中庭の無効にはバステラス

「版築の家」4
エントランスからリビングに上がる階段

「版築の家」5
エントランスから半階上がったリビングより、キッチン、更に半階上がった子供スペース

「版築の家」6
子供スペースからリビングを。正面壁と、キッチンの仕切壁が版築になっています。

「版築の家」7
子供スペースからキッチンを。北側の窓からは長閑な風景が広がります

「版築の家」8
主寝室から中庭を。クローゼットの版築が、外部バステラスまで連続しています

「光の筒をもつ家」1
東側のファサード。向かって左にエントラス、右はバイクガレージの木製折れ戸でフルオープンします

ご夫婦と息子さんの3人家族のための住宅です。
ご主人は、バイクをいじれる書斎(バイクガレージ)を、奥様は広いタイル貼(床暖房)のLDKを、息子さんは自分のスペース(基地)を、それぞれ思い入れの強いスペースを希望されていました。ご夫婦とも多趣味で、家族と共に過ごす時間も、自分の時間も大切にされている印象が強く、息子さんも幼いながらに自分の世界を持っているので、子供の成長に伴い、それぞれの時間を過ごしながらも、孤立せず、お互いの存在を感じることが出来る家を目指しました。
そこで、それぞれ思い入れのあるスペースを、上部にトップライトを設けた2階のライトコートに接してガラス開口を設けることによって、光を取り入れつつ、違うスペースに居てもお互いの気配を感じることができるようにしました。この光の筒が、家の中心を貫通し、明るさをもたらすと共に、一体感を与えています。
ライトコートは、共働きで日中留守にするライフスタイルに合わせて、洗濯物干しスペースにもなり、忙しい平日も家事をしながら、子供の様子を窺える開口部としても機能しています。
(写真全て上田宏建築写真事務所 撮影)

「光の筒をもつ家」2
南側のファサード。右奥にシンボルツリー越しにエントランスが見えます

「光の筒をもつ家」3
エントランス。左側は道路からの視線を和らげるように配置した外収納

「光の筒をもつ家」4
リビングからエントランスを。1Fはエントランス、階段、LDKが大きい土間のように1つの空間になっています

「光の筒をもつ家」5
リビングから南面を。南の光を取り入れる高い位置の開口

「光の筒をもつ家」6
ダイニングキッチン。上部はトップライトがあるライトコート(洗面室)、右側にはバイクガレージ

「光の筒をもつ家」7
ダイニングからバイクガレージを。木製折れ戸をオープンにすると長閑な景色とつながります

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